東京高等裁判所 昭和55年(う)2176号 判決
大麻の輸入を処罰する大麻取締法二四条二号、四条一号は、大麻の濫用による保健衛生上の危害を防止するため、大麻を本邦に搬入する行為そのものを規制しようとする規定であつて、この立法の趣旨からすれば、大麻が本邦に搬入されたいち早い段階でその規制をする必要があり、その必要性は、税関通過の先後を問わないものというべきであるから、大麻取締法の輸入罪は、犯人が大麻を携帯して空路外国から本邦に到着した時に既遂に達するものと解するのが相当であり、原判決が、これと同旨の解釈のもとに、被告人が大麻草を隠匿・携帯してタイ国バンコク空港から空路新東京国際空港に到着した時に同法の輸入罪が既遂に達したものと認定し、これに前記法条を適用したのは正当である。一方、関税法にいう輸入とは、外国から本邦に到着した貨物を関税線を通過して本邦に引き取る行為をいうのであつて(関税法二条一項一号参照)、本件空港の如く、税関の旅具検査場が設けられ、本邦に到着した者は、ここで所定事項を税関に申告し、輸入しようとする貨物につき必要な検査を経てその輸入許可を受けたのち、当該貨物を場外に持ち出すべきものとされている場所では、犯人が密輸入しようとする貨物を所持して外国から空路本邦に到着したのち、当該貨物を除外した申告書を税関職員に提出するなど、税関長の許可を受けないで貨物を旅具検査場を経て場外に持ち出す行為が開始された時に同罪の実行の着手があり、これを場外に持ち出したときに既遂となるものと解するのが相当であり、原判決が右と同旨の解釈のもとに、被告人の犯した関税法の無許可輸入罪を未遂と認定したのもまた正当である。